日本語は、敬語・丁寧語がしっかりしている言語だとよく言われますよね。
目上の方に対して、言い回しに気を付けることはもちろん、使う単語自体を変えて表現するようなこともあります。
一方で、英語を話す時に丁寧語を意識する機会はとても少ないのではないでしょうか?
しかし、英語にも使う場面や相手に気を付けなければならない表現がいくつかあります。そこで今回は、うっかり使ってしまいがちな失礼な表現と、その丁寧語表現についてご紹介してみたいと思います。
①”please”だけでは不十分!長めのフレーズに丁寧さがにじみでる
英語でお願い事をするときは、[please]を付けて表現することが多いですよね。
「どうぞ/どうか(お願いします)」というニュアンスが入る[please]は、お願いフレーズに欠かせない効果的なワードですが、相手によってはまだまだ丁寧さが不十分な表現です。
みなさんご存知の通り、[Would you~?]や[Could you~?]の疑問文にすることで「~していただけませんか?」といった丁寧な文章になるため、これまで目上の方に対してはそのような表現を使っていた方が多いのではないでしょうか?
もちろんこれらの表現でも丁寧さを出すことはできるのですが、ただでさえ気を遣わなければならない目上の相手に「お願い事」をするとなれば、最大限丁寧さに配慮した表現にすべきですよね。そこで私がおすすめしたいのが[I was wondering if~.]のフレーズです。
ニュアンスとしては、「もしあなたが~してくださったらとてもありがたいなと思ったのですが…」といった感じで、非常に遠回しで控えめな言い方です。
少々くどすぎるように感じるかもしれませんが、英語で分かりやすく丁寧さを表現するなら長めのフレーズを用いるのが一番効果的です。
何かと略した表現が多い英語だからこそ、長めのフレーズから丁寧さがにじみでるんですね。
さて、こちらの表現は映画「プラダを着た悪魔」で主人公アンディと元職場先輩エミリーの会話に登場しています。
アンディ:I have a favor to ask you.(お願いがあるんです。)
エミリー:You have a favor to ask of me?(私に頼みですって?)
アンディ:Yeah. Thing is, I have all these clothes from Paris and I don’t have any places to wear them…so I was wondering if you could take them off my hands.(ええ。あの、パリで着た服が山のようにあるんです。でももう着ていく場所もありませんし…もらっていただけたらありがたいと思ったのですが。)
→1,2度しか着ていない高価な服を譲りたいという申し出ですので恐縮するようなお願いではないにしても、突然自己都合で退職した立場で先輩にお願い事をするシーンですので、出来る限り丁寧な表現を使って伝えようとしているのが分かると思います。
もしもここで[Please take them off my hands.(もらってください。)]だけだったら、やはり少しぞんざいな感じがしてしまいますよね。
②目上の相手に意見するならクッション言葉を!
ビジネスシーンでは特に、目上の相手に対して意見しなければならないような場面もあることでしょう。
言うべきことははっきりと伝えるべきですので、変に回りくどい表現をする必要もないと思いますが、そんな中でも相手に敬意を払った表現には気を付けたいところですよね。
そこで使いやすいのが、文頭で前置きするクッション言葉。
今回ご紹介したいのは、[with all due respect(お言葉ですが、失礼ながら)]というフレーズです。
「お言葉を返すようで申し訳ございませんが…」と前置きしておくことで、そのあとのフレーズは必要以上に回りくどい表現を使わなくてもストレートに自分の考えを伝えられます。
ちなみにこちらの表現は、映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」に登場しています。領土侵略に対し強硬姿勢を貫くマーガレットの元へ、米国首相がやってきたときの彼女のセリフです。
“With all due respect sir, I have done battle every single day of my life, and many men have underestimated me before. This lot seem bound to do the same but they will rue the day.(お言葉を返すようですが、これまでの私も戦いの日々でした。男に見くびられながらね。今度の相手も同じでしょうが、最後には泣きを見ます!)”
→首相同士の会話ですから、お互いに敬意を払いつつも自国の主張を貫かなければならない状況です。まさにそんなときにぴったりのフレーズなのだということが分かりますね。
ちなみに文中に登場している[sir]も丁寧表現には欠かせないもの。日本人は「イエッサー!」というフレーズで軍隊のイメージを持ってしまいがちが、実際には敬意を払うべき男性に対して日常的に使われている言葉です(女性の場合は”ma’am”)。
③”What’s wrong with you?”は誤解を生みやすい!
様子がおかしい相手に対して、「どうしたの?」と聞きたい時一番に思いつくのは”What’s wrong with you?(どうかしたの?)”なのではないでしょうか。しかし、こちらのフレーズは使う場面や語調に気を付けなければ大変な誤解を招いてしまいかねないフレーズです。
海外ドラマ「Sex and the City」より、ミランダが故障したTiVO(テレビの録画機器)についてメーカーに問い合わせているシーンをご紹介いたしましょう。
ミランダ:Can’t you work with me on this?(どうにかしてもらえない?)
メーカーの担当者:~~~(電話で何かを指示)
ミランダ:You told me to do that already. What is wrong with you?(それはさっきも聞いたわよ。どうかしちゃってるんじゃないの?)
→ニュアンスは伝わるでしょうか?一度試してダメだった操作を何度も試すように指示してくるメーカーの担当者に頭が来て「どうかしちゃってるんじゃないの?(頭おかしいんじゃないの?)」と言っているんですね。”What’s wrong with you?”はそういった攻撃的なニュアンスで取られる危険性が少なからずあるフレーズなんです。
そこで、相手を心配して「どうかしたの?」と聞きたい場合は”Is anything wrong?”と穏やかに尋ねるのがおすすめです。ほとんど同じ文章のように思えますが、しっかり使い分けてくださいね。
④「それで?」と話しを促すなら”And?”が正解
日本語の「それで(何があったの)?」に英語をぴたりと当てはめるとしたら、[So what?]なのではないでしょうか。
しかし、実はこのフレーズも誤解を招きやすい表現です。欧米で[So what?]というのは、自分にとってバカバカしい話題の時や、うんざりしているときに「それが何?」「だから?」と言うのに用いられるフレーズなんです。
相手の話を楽しんでいて、ポジティブに「それでそれで~?」と先を促したい時は”And?”を使うようにするのがベスト。これも発言するときの語調が大切ですので、にこやかにちょっと前のめりな感じで発言できるとよいですね。
英語の丁寧語を使いこなそう!
丁寧語は存在しないと考えられがちな英語ですが、実は相手との関係性に配慮する表現はたくさんあります。
今回ご紹介したことも参考にしながら、TPOに合わせた言葉選びができるように練習していきましょう!
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投稿者プロフィール
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高校時代にイギリス留学、大学~社会人時代に2度のNY滞在を経験。大学時代には留学生チューターとして海外留学生の支援に関わる。
現在のTOEICスコア875点(リスニング満点)。英会話講師として勤務する傍ら、海外ドラマや洋画を用いた英語学習法に関する記事を多数執筆。
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